まろやかインド哲学

専門性よりも親しみやすさを優先し、インド思想(インドの視点)をまろやかな日本語で分解演習します。座学クラスの演習共有のほか、サーンキヤとヨーガの教典についてコメントしながら綴ります。

プルシャが目的とするものが器官の協力によって照らし出され、ブッディに渡される

サーンキヤ・カーリカー 第36節・その注釈で述べられていること

グナが特別に変化したものであるこれら(3つの内的器官と10の外的器官)は、それぞれ特異質を持ちながら、ロウソクの役割を果たします。
プルシャが目的とするものをすべて照らし出し、ブッディに渡します。

 

<「サーンキャ・カーリカー」内でのこの節>
3つの内的器官と10の外的器官については、これまでの節でそれぞれ分解して語られています。
この節では、ここまでで説明された13器官(ブッディ・アハンカーラ・マナス・知覚器官・行為器官)が協力することでなされる、「こころのしくみ」を説明しています。
外部から受けた刺激がブッディにたどりつくまでの説明をしており、ブッディ(統覚機能・理性)がはたらく直前までのことを説明しています。

第31節のつづきのような節です。


<日本語化の意図メモ>
ブッディは判断をする機能を持つだけであるという、微妙なポジション(情報提供を受ける側ではあるが、それはブッディ自体が求めた情報ではない)を説明する節で、末尾を「渡します」という最もシンプルな表現にしました。過去の先生の訳を見ると「提供する」というほうがわかりやすい気もするのですが、ブッディ自体も "グナが特別に変化したものであるこれら" に含まれ、並列の書き方をしているのがサーンキヤの特徴なので、ここでは内的器官のひとつであるブッディに特別感が出すぎないように、淡白に訳しました。

「グナがそれぞれ特異質を持ちながら、キャンドルの役割を果たす」というのも、インド思想のなかに登場する定番の喩えです。
ここは日本の蝋燭(ロウソク)をイメージするとわかりやすいですが、
ロウソクの芯はタマス性(土台、安定性)
ロウソクの火はラジャス性(燃える、熱性)
ロウソクの火を囲む空気はサットヴァ性(穏やかな状態の空気、静的と動的の中間)
と説明されることもあります。

 

<用語メモ>
これら(ete)
ランプ、灯火(pradipakalpah)
相互の、交互の、もう一方と同様に(paraspara)
特徴づけられた賢明さ、調和して様々である、特有の、さまざまの、非常な(vilaksana)
グナが特別に変化したもの(guna+visesa)
全体、すべて(krtsna)
プルシャの目的(purushartha,purusartha)
照らす、明らかにする、示す(prakasya,prakasha)
ブッディ(buddhi→buddau 提供される側)
手渡す、引き渡す、配達する、授ける、ささげる(prayacchati)

 ★visesa(visesah,visheshaah)は英語でextraordinary,peculiar,definite,abundant,variation,modification,peculiarity,individualization,superiority,varietyなどの多くの語が該当します。「変わる」という日本語にも多くのニュアンスがあるのと似ており、ここでは「いつもの感じで移行」するような変化ではなく、異質さ、特異さ、特別さがあるニュアンスです。

 

アーサナ練習の雑学メモ>
ヨーガの技術書として有名な「ハタ・ヨーガ・プラディピカー」はハタ・ヨーガを照らすランプという意味です。

 

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