まろやかインド哲学

専門性よりも親しみやすさを優先し、インド思想(インドの視点)をまろやかな日本語で分解演習します。座学クラスの演習共有のほか、サーンキヤとヨーガの教典についてコメントしながら綴ります。

ダルマの状態は3種類ある

サーンキヤ・カーリカー 第43節・その注釈で述べられていること

功徳には、先天的な生まれつきのもの、自然にそなわるもの、後から獲得するものがあります。
これらは器官を拠り所とすると認められています。妊娠直後の胎児は、結果(である粗大な身体)を拠り所にしています。

 

<「サーンキャ・カーリカー」内でのこの節>
「リンガが功徳や罪過を乗せる媒体」とした前の節を、より掘り下げています。

 

<日本語化の意図メモ>
以下の2点への配慮のしかたによって、訳のわかりやすさが大きく分かれる節です。

  • ~と認められている。という記述になる drstah どの範囲にかかるものとするか
  • 英語の and にあたる ca をどういうトーンで日本語化するか

「認められる」「認められている」でニュアンスに差が出ますが、インドの教典は過去の伝えを継承するトーンで語るものが多いので、「認められている」としました。

 

この節は意識的に深読みすると1行目と2行目の関係がおもしろい節で、例に胎児の状態をあげていることで、以下の推測ができます。

  • 胎児はまだ物質としての粗大な身体しか得ていないので、そこを拠り所にしている=精神体である微細な身体をまだ備えていない。
  • 男女が性交渉をして妊娠することが、まさに器官を拠り所とした功徳のひとつの形である事例。

上記については特に注釈書に説明があるわけではないので、わたしの読み方です。

 

<用語メモ>
先天的な(samsiddhika, 英語のinnate)
状態、体質bhava)
自然なもの(prakritika)
獲得したもの(vaikartika)
ダルマ、法、功徳(dharmadyah)
見る、認める(drstah)
器官を拠り処に(karana+srayinah)
結果を拠り処に(karya+srayinas)
器官(karana)
行為、結果(karya)
拠り所、支える、持つ、用意する、所有する、住居を定める、保護(sraya,srayam)
妊娠直後の胎児(kalala / kalaladyah)

 

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