まろやかインド哲学

専門性よりも親しみやすさを優先し、インド思想(インドの視点)をまろやかな日本語で分解演習します。座学クラスの演習共有のほか、サーンキヤとヨーガの教典についてコメントしながら綴ります。

無能力の状態は28種類

サーンキヤ・カーリカー 第49節・その注釈で述べられていること

11器官【知覚器官(5)+行為器官(5)+マナス】の損傷は、(統覚機能である)ブッディの損傷とともに、無能力として示されました。
ブッディの損傷は17種類です。満足(9種類)と達成(8種類)の逆にあたるので、(合計)17種類です。

 

【無能力=11器官の損傷+ブッディの損傷(17種)=28種類】


<「サーンキャ・カーリカー」内でのこの節>

無能力(asakti)の種類をカウントしています。無能力(asakti)は、器官の損傷とブッディの損傷であるということを、不思議な文章で述べています。
本文に28という数字は出てきませんが、注釈に「よって無能力は28種類です」という解説があり、ここでは無能力を細分化してカウントしていることが説明されています。

<日本語化の意図メモ>
もとの文章に沿った訳しかたをすると、以下の要素がわかりにくくなるのが残念です。
ここは「ブッディの損傷=決定・判断不能=無能力の状態」⇒「満足・達成にはブッディが機能することが必要」ということを述べている、内容を端的に捉えるとすばらしい節です。
出だしで外的器官の10と内的器官のマナスを足して11とカウントしており、内的器官のほかのふたつ(ブッディ、アハンカーラ)は切り分けられています。
そのうえで、ブッディも損傷するものとされます。そうなると、アハンカーラだけがカウントに入りません。
第24節で「アハンカーラは、知覚したものを自己に関連づける」と述べているので、アハンカーラには損傷というはたらきを設定していないのか、ここは先の節でも述べられることはありません。


<用語メモ>
11(ekadasa,ekadasha / eka=1,dasha=10)
器官(indriya)
損傷、毀損(vadha)
ともに、いっしょに(saha)
ブッディ、統覚機能(buddhi)
無能、無能力(asakti a+sakti / 先頭の a=not)
示された、言及された、述べられた(uddista)
17(saptadasa,saptadasha / sapta=7,dasha=10)
反対の、逆の(viparyayat)
満足、喜び(tusti)
成就、達成、完成、確立(siddhinam)
vadhaには少し破壊的なニュアンスの意味もある(deadly weapon,frustration,murder,defect,deathなど)。

 

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