2015年の夏の関西開催で、夏目漱石作品をもともといくつか読んでいて初参加をされたかたから「なんで夏目漱石なんですか?」というシンプルな質問をいただきました。
そこで作成したテキストに補足を加え、主な理由をいくつか紹介します。
二元論を超えようと模索している
たまに勧善懲悪っぽい斬りかたの場面もありますが、善悪や白黒をつけずにグレーのグラデーションの範囲で心の動き・はたらきをつぶさに切り取っていく、丁寧な心理描写がされています。複数の目で読むことで、同じ文字列でも各自が自分の中から引っ張り出してくる過去の記憶や印象の刻み方を再認識することになります。
トリグナの描写のような表現が見つけられる
たくさんありますが、一例
運動をしてドーシャの乱れを解消したり、しなかったりする例
- 三四郎は癇癪を起こして教場を出た。そうして念のために池の周囲を二へんばかり回って下宿へ帰った。(三四郎)
- その日はなんとなく気が鬱して、おもしろくなかったので、池の周囲を回ることは見合わせて家へ帰った。(三四郎)
歴史と関連人物
組織名・人名 | 年代 | 概略 |
---|---|---|
東インド会社 | 1600~1874 | いまのコルカタを拠点にイギリスがインドを植民地支配していた |
ウィリアム・ジョーンズ(英) | 1746~1794 | ペルシア語を介さずに直接サンスクリット研究。『マヌ法典』翻訳 |
パウル・ドイセン(独) | 1845~1919 | ウパニシャッドをドイツ語に翻訳。「吾輩は猫である」に登場する独仙のモデルといわれている |
釈宗演 | 1860~1919 | シカゴ万国博覧会 (1893年)『万国宗教会議』に参加。インド経由で帰国 |
スワミ・ヴィヴェーカーナンダ(印) | 1863~1902 | シカゴ万国博覧会 (1893年)『万国宗教会議』に参加 |
岡倉天心 | 1863~1913 | タゴール、ヴィヴェーカーナンダ等と交流。『茶の本』執筆。東京藝術大学幹事 |
夏目漱石 | 1867~1916 | 明治27年に円覚寺の帰源院に投宿して釈宗演老師に参禅 |
鈴木大拙 | 1870~1966 | 釈宗演の通訳を務める。1950年より1958年にかけ、アメリカ各地で仏教思想を講義 |
仏教・禅以外の夏目漱石とインド哲学の関連性については、「漱石文学の思想 第二部 自己本位の文学 今西順吉 著」にいくつか興味深い考察がありますが、作品から直接的に得られる関連性としては「パウル・ドイセン」の存在があります。わたしが読む限りでは、「吾輩は猫である」の八木独仙・「三四郎」の広田萇(広田先生)のセリフには、かなりウパニシャッドにある思想の色が濃く見えます。というかインド人に見えます。広田先生はもはやシャンカラにしか見えません。
過去の読書会、雑談の様子
「うちこのヨガ日記」のほうに、いくつかカジュアルに書いていますので、ご参考までに。
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